赤ちゃんが実際に会話ができるレベルになるまでに、4、5年の時間を費やしているという点です。その点を深く理解するために、以下に、
有料版49ページからの引用を転載しました。
引用:
『 白井(2004)によると、乳幼児が、大体母語を習得する4年間に与えられるインプットの量は、17,520時間(12×365×4)ということになる。しかも、生命の危機と隣り合わせの状態(負荷のかかった状態)で、聞き続けるわけである。それに対して、まじめな日本人英語学習者が、中学校から高校までに毎日1時間、休まず6年間英語を勉強したとしたら、その総時間は2,190時間(1×365×6)にしかならず、乳幼児の例の8分の1にしかならない。』
万が一、17,520時間とまでは言わずとも、その半分以下の8,000時間もの間、必死に英語だけを聞き続ける環境を作り出せる方なら、自然にしゃべれるようになるまで、リスニングを続けるという方法は可能かもしれませんが、
現実的ではないことは明らかです。
リスニングセクションと同様に、コチラ
「聞き流すだけで英語はペラペラになりますか?」のQ&Aのページで説明していますので、繰り返しませんが、結論だけ言えば、大人(臨界期をすぎた学習者)は、もう赤ちゃんではないので、赤ちゃんの特権である自然習得ではなく、
大人の効率的な学習が必要です。
また、コチラ
「なぜ、このサイトとCLAメソッドを創ったのか?」ー2でも言及したように、留学という手段をとってみても、ワーキングホリデーや語学学校も含め、大学以降の留学では、小中高のように半強制的に英語を聴かされるという状況がないため、英語のみを聴き続けるという環境を作りにくいという制約もあります。(逆に、高校生までの留学であれば、現地の高校に入ることで、朝から晩まで半強制的に英語をシャワーのように聴き続ける環境を作り出せるので、赤ちゃんの手法は効果的です。)
では、純ジャパの英語学習者(純粋なジャパニーズの略で、中学高校まで、日本の文法中心の教育を受けた日本人英語学習者)は、どのような学習を行えば、英語がしゃべれるようになるのでしょうか?
1つの答えとして提示したのが、
<<チャンク会話法>>です。
実は、第二言語学習研究の分野では、「Younger is better, Older is faster.」という考え方があり(
『外国語学習の科学』白井恭弘著
より)、すでに日本語を使える”大人”の方が、ある程度母語を外国語に適応させる能力がある分、子どもよりも早く習得が可能であるという考え方が支持される傾向にあります。(*ただし、若いほど、よりネイティブ並に言語を扱える可能性が高いことも主張されています。)
このチャンク会話法は、その母語の転用を反映した純ジャパに適した会話法と言えます。チャンクとは、《かたまり》を意味します。例えば、「~したい」という「want to~」を例にとってみましょう。~の部分に、動詞を入れることで、「走りたい、食べたい、話したい」「want to run, want to eat, want to speak」など様々な表現が可能になる、それが
「英会話で即使えるチャンク」という考え方です。
その
「英会話で即使えるチャンク」の
”量”を増やし、〜の部分により多様な単語を組み合わせ、様々な状況に柔軟に対応できる
”質”を高めた上で、チャンクを獲得していきます。※また、この学習方法は、チャンクという型(パターン)を練習するという意味で、
「パターンプラクティス」(もしくは、パタンプラクティス)と呼ばれています。
ただし、独学で、この
チャンク会話法を行い、質と量が向上したチャンクをある程度獲得した後は、実際に英会話で使ってみて、通じるかどうかを確認し、修正を加えていく作業も後々当然必要になってきます。逆に、このチャンクがない状態で、英会話の実践に飛び込んだとしても、コチラ
「英語初心者からペラペラへの道のり」ページで説明したように、クロールや平泳ぎなどの型(チャンク)がままならないのに、いきなり、足の着かないような海で、実践的な泳ぎをするようなものです。(※ 度胸はつきますが。)ですので、
英会話は、自分が収集したチャンクが通じるかどうかを確認し、ネイティブの方に修正してもらう場ととらえた方が、ずっと効果が高まるはずです。
その”大人”の英会話の場を、スポーツの【練習(チャンク会話法)】と【試合(実際の英会話実践)】という関係でとらえ直すと、もっと分かりやすいかもしれません。
つまり、練習したものしか、試合に出ないということです。
また、スピーキングにおいても、音声/リスニングを無視することはできません。むしろ、音声ありきで、スピーキングの前に、基礎的なリスニングスキルは必須です。
別ページ(
「ABCはなぜそこまで重要か?」ページ )でも指摘しましたが、日本の英語教育では、26のアルファベットの発音が無視されがちです。多少極端ですが、あたかも、外国人が「あいうえお」を「ぅあ、び、ぶゅ、べ、びょ」と発音して日本語を学んでいるのに、「それって間違ってるよ」と誰も指摘しない状況と同じぐらいの異常さを感じます。
リスニングの基礎と、基礎的な文法/語彙、そして基礎的なチャンクを身につけた後は、チャンクの状況での使い分けを身につけ
(Ex. want to と would like to の使い分けなど ※同じ「〜したい」という意味ですが、後者の方がより丁寧な表現のチャンク)、さらに使えるチャンクを増やしていくことで、よりスムーズに英語を話せるようになります。(すぐに使えないチャンク3000個を暗記しているよりも、すぐに使えるチャンクが30個あった方が会話は断然スムーズです。)
また、会話の基礎(基礎発音、基礎文法/語彙、基礎チャンク)が固まれば、リスニングやリーディングでインプットされたチャンクや表現を真似して使えるようにもなります。
ですので、
いきなり英語で会話をしようとせず、基礎を固め、まずは、使えるチャンクを1つずつ丁寧に増やしていって下さい。
以下で、スピーキングの上達方法(習得段階)と、それに対応した学習手法/教材を提案します。